「心臓が痙攣している」。医師からのその一言は、私の平穏な日常を完全に破壊しました。この記事では、私が経験した心房細動の恐ろしさと、それを根治するための最先端医療「カテーテルアブレーション」の全貌を、患者の視点から包み隠さず記録します。
1. 心房細動とは何か?突然の動悸の恐怖
ある夜、ベッドで横になっていると、胸の奥で小鳥がバタバタと羽ばたいているような奇妙な感覚に襲われました。脈を測ってみると、トン……トン……トトトン!と、リズムが完全に狂っていました。これが私の「心房細動」の始まりです。
心房細動は、心臓の上部にある「心房」という部屋が、1分間に400?600回という異常なスピードで細かく痙攣(細動)してしまう不整脈です。心臓がポンプとしての役割を正常に果たせなくなるため、息切れや強い疲労感に襲われます。
最大の恐怖は「脳梗塞」のリスク
心房細動そのものですぐに命を落とすことは稀ですが、真の恐ろしさは合併症にあります。心房が痙攣して血液が滞留すると、心臓の中に「血栓(血の塊)」ができやすくなります。これが血流に乗って脳の血管に詰まると、広範囲の脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こし、致命的な結果や重い後遺症をもたらすのです。
2. なぜカテーテルアブレーションを決断したか
発症当初は、脈を抑える薬(抗不整脈薬)と、血液をサラサラにして血栓を防ぐ薬(抗凝固薬)による投薬治療を行いました。しかし、薬はあくまで「対症療法」であり、不整脈が起きないように抑え込んでいるだけで、病気そのものが治ったわけではありません。一生薬を飲み続けなければならない不安と、いつまた発作が起きるかという恐怖が常に付きまといました。
そこで主治医から提案されたのが、「カテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)」です。足の付け根の静脈から細い管(カテーテル)を挿入し、心臓まで到達させます。そして、不整脈の原因となる異常な電気信号を出している心筋の部分を、高周波電流で焼き切る(または冷凍バルーンで凍結壊死させる)ことで、不整脈の根治を目指す手術です。
「心臓を焼く」という言葉の響きに強い恐怖を覚えましたが、成功率の高さ(発作性であれば80?90%)と、薬から解放される未来を信じ、手術を決断しました。
3. 【実録】手術当日の流れと局所麻酔の痛み
ネット上には「全く痛くなかった」という意見もあれば「死ぬほど痛かった」という意見もあり、手術前日は不安で眠れませんでした。私の実際の体験は以下の通りです。
- 手術室への入室: 冷たい手術台に横たわり、心電図のパッドや点滴のルートが次々と確保されます。この時の緊張感はピークに達していました。
- 局所麻酔とカテーテル挿入: 全身麻酔ではなく、静脈麻酔(うとうとする薬)と局所麻酔で行われました。右足の鼠径部(付け根)に局所麻酔の注射を打たれます。これが「ズシン」と重い痛みでした。その後、太い針が刺さりカテーテルが入っていく感覚はありますが、痛みはありません。
- 心筋の焼灼(アブレーション): カテーテルが心臓に到達し、いよいよ焼灼が始まります。私の場合は高周波(熱)でした。心臓自体には痛覚がないと言われていますが、焼灼中は胸の奥が熱くなり、みぞおちの辺りに強い圧迫感(鈍痛)を感じました。「焼かれている」という奇妙な感覚です。痛みが強い時は麻酔を追加してもらえました。
4. 術後の「絶対安静」という最大の試練
約3時間の手術が無事に終了しました。しかし、本当の地獄はここからでした。
足の太い静脈に穴を開けたため、術後は傷口を砂袋で圧迫し、**「ベッドの上で仰向けのまま、右足を一切曲げずに数時間絶対安静」**を指示されます。
身動きが取れないまま時間が経過すると、猛烈な腰痛が襲ってきます。寝返りを打ちたくても打てない苦痛は、手術そのものの恐怖を上回るものでした。同じ手術を受ける方には、事前に腰痛対策(バスタオルを腰の下に敷くなど、看護師さんに相談しておくこと)を強くお勧めします。
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入院中の食事、持ち物リスト、退院後の再発の有無や定期検診の様子など、日々の詳細な記録は専門ブログ「くま次郎日記」にて連載しています。これから手術を控えている方の不安解消に役立てば幸いです。
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